一般社団法人あがり症克服協会 代表理事 鳥谷 朝代
株式会社スピーチ塾 代表取締役
人見知り克服協会 代表
心理カウンセラー
NHKカルチャー/朝日カルチャー/よみうりカルチャー
中日文化センター/リビングカルチャー話し方講師
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「初対面の人と話すのが苦手」「人前で話すときに緊張してしまう」――そんな経験をしたことがある方は多いかもしれません。
社会生活において多くの人が抱える悩みであり、自己表現や人間関係構築においての”壁”となるテーマです。
初対面の人とのコミュニケーションや公の場での発表に緊張を覚える方は少なくありません。
このコラムでは、あがり症と人見知りの特徴や原因、克服方法についてお伝えしていきます。
より豊かな人間関係と充実した社会生活を築くためのヒントを見つけていただけましたら幸いです。
目次
1.人見知りとは?あがり症と違うの?
2.人見知りの原因とメカニズム
3.人見知り克服のためには
4.人見知りさんが他人と打ち解けるコツ
5.人見知りさんがうまく話せるためのトレーニング
6.まとめ
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1.人見知りとは?あがり症と違うの?
あがり症とは、医学的に社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)とも呼ばれ、一般的に大勢の人前で自分の意見や感情を表現する際に、緊張や不安を感じ、上手く話せない状態のことをいいます。
この症状は、発表やプレゼンテーション、面接など、さまざまな場面で現れることがあります。
一方で、人見知りとは、初対面の人を相手にするときや人間関係の範囲が狭い場面でも、自己を閉じ込めてしまう性格の傾向のことをいいます。
そもそも人見知りとは、子どもが慣れない大人に対して恥ずかしいという感情や不安な気持ちを持つことを指しており、子どもの発達段階における特性を意味していました。
現代では、大人も含めて、初対面の人と交流することを避けてしまう心理や行動全般を指すことが多いようです。
異性の目や人目が気になる思春期に強く自覚する人が多いのが特徴ですが、社会人になり、自覚するある程度の地位に就く中で、コミュニケーションが苦手とも言っていられなくなり、苦手意識を改善しようとする大人の方も多くいらっしゃいます。
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2.人見知りの原因とメカニズム
あがり症、人見知り、どちらも人間関係や社会生活においてストレスを引き起こすことがあり、原因は人によって異なりますが、一般的な要因としては、過度の自己評価や他者の評価への過剰な気遣い(自意識過剰)、トラウマなどが挙げられます。
過去に失敗した経験からトラウマが生じ、それが引き金となって新たな場面で緊張が高まります。
これを予期不安といいます。
また、周囲の期待や評価に対して過度なプレッシャーを感じることで、思考が停止することがあります。
このような状態になると、本来の自分を表現できずに悪循環に陥ります。
また、幼少期の家庭環境や社会環境も大きく影響を与えるとされています。
例えば、幼少期に友人関係や集団の中で受けたイヤな経験が人見知りの原因となったり、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思える力が弱いために、新しい人間関係を築くことに消極的になり、結果的に自己の世界に閉じこもってしまったりします。
人見知りの場合、新たな人間関係を築くチャンスを逃してしまうことで、孤立感を感じていきます。
出典元:保育所保育指針 – 厚生労働省
3.人見知り克服のためには
では、あがり症や人見知りを克服するためにはどうすれば良いのでしょうか?
まず、自分のことを理解することが大切です。
自分がなぜあがってしまうのか、なぜ人見知りなのかを冷静に考えることで、その原因に気づくことができます。
たとえば、同じように緊張したとしても、それをずっと引きずる人と、こんなもんかなと割り切る人といます。
自分の思考グセはどんなだろう?自分の強みや長所はなんだろう?と見つめ直し、自己評価を適切なものに整えることです。
また、他の人とのコミュニケーション能力を向上させるために、積極的に社交的な場に参加することも効果的です。
初対面の人との会話に抵抗がある場合は、趣味や興味、あるいは同じ悩みを共有できるグループに参加すると打ち解けやすいです。
そして、プレゼンテーションや面接などの緊張する場面に慣れるために、本番リハーサルを重ねることです。これをやることで自信がついていきます。
これらを取り組み続けるには、決して自分ひとりではできません。
同じように人見知りやあがり症で悩む人との交流、周囲の理解とサポートも大切です。
励まし合うことで、精神的な負担(不安や緊張)を軽減することができます。
4.人見知りさんが他人と打ち解けるコツ
人見知りさんは、自己主張が苦手な人が多いと思います。
「何が食べたい?」「どこへ行きたい?」に対して、「何でも。どこでも。」
レストランで注文する際も、「みんなと同じでいいです」。
自分の主張の飲み込んでしまうことで、苦しくなってしまうのです。
自分の考えを通そうとすると、様々な価値観の中で、意見や好みの食い違いが生じることもあります。
そんなときも、自分の素直な気持ちを伝えたうえで、(たとえ自分の考えと違ったとしても)相手の気持ちも受け入れられること、これらが備わってはじめて「自己主張」です。
自他ともに考え方を尊重しあえる、アサーティブな関係です。
自己主張と似て非なるのが、「ワガママ」「ジコチュー」です。
自分の気持ちがすべてで、相手が自分の思い通りにならないと、イライラしたり、パニクったり、相手を否定したり。
人見知りには、ジコチューが少ないと思いがちですが、実は、自分の思いを主張するのが苦手=日頃からストレスやうっぷんを溜めやすいことで、周りや環境のせいにしてしまう人見知りさんも。
そういう場合は、相手の気持ちをコントロールしたり、反応を決めつけるのではなく、自分の気持ちをコントロールするように努めましょう。
たとえば、何か話したら、必ず共感してもらいたい。
同じように悲しんでほしい。
自分の好きなものは、相手も好きであってほしい。
人間なので、そういう願望は誰にでもありますが、誰もが同じ趣味・思考を持っているとも限りませんし、他人は自分の思い通りにはできません。
できないことを何とかしようとすると、ストレスになります。
ですので、これからは、「私はこういう風に思っているんだけど、どうかな」「私はKPOPが好きだけど、~ちゃんは?」というふうに、相手の気持ちを受け入れるゆとりを持つようにしましょう。
最初から相手の反応や好みを決めつけると、違った反応をされたときに、凹んだりイライラしたりする気持ちが大きくなりますが、「共感されるかもしれないし、されないかもしれない。好みが合ったらラッキー」ぐらいの心持ちでいると、ネガティブな気持ちがそこまで生じなくなります。
KPOPを例に挙げましたが、自分の好きな音楽やドラマ、映画、本などを人にオススメするのは、自己主張初心者さんには最も取りかかりやすい方法です。
そこには正解・不正解はなく、相手と好みが合っても合わなくてもまったく構わないからです。
まだ観ていなくても、「あの映画、面白そう…気になる!」というのだって、立派な自己主張です。
好きなものをオススメしあったり、気持ちをオープンにしたりされたりしながら、周りの人と良い関係を築いていきましょう!
5.人見知りさんがうまく話せるためのトレーニング
初対面の人に話しかけるのが苦手な人は、「お店の人に話しかける」練習をしてみましょう。
実は、店員さんに話しかける行為は、コミュニケーションでの成功体験が最も得やすいです。
店員さんはその分野のプロであるのと同時に、接客のプロなので、基本的にお客様の声にしっかり最後まで耳を傾けてくれる姿勢を持って聞いてくれるからです。
こちらがまだ話している途中なのに、それを遮って口を挟まれてしまった経験、ありますよね。
「話しかけても最後まで聞いてもらえない」という体験を積み重ねている人ほど、自分から人に話しかけることに無意識のうちに苦手意識を持っている人が多いです。
そういった苦手意識を変えるチャンスがショップにはありますので、できるだけ話しかけやすそうな人、感じがよさそうな人を見つけて声をかけるのがオススメです。
入院したときの看護師さんのやさしさが忘れられない、飛行機に乗った時のCAさんの笑顔や所作が素敵だった、という人も多いですよね。
彼女たちは、患者さんや乗客の気持ちがやわらぐように気遣いをされながら、きびきびと働いていらっしゃいます。
ショップでなくてもいいです。
旅行先で道を尋ねたいとき、写真を撮ってもらいたいとき、できるだけやさしそうな人を見つけてお願いしてみましょう。
自分を受け入れてくれそうな、安心安全な場所から、コミュニケーションをはじめてみてくださいね!
6.まとめ
あがり症と人見知りは、多くの人が抱える悩みですが、今の自分を理解することと、他の人とのコミュニケーションや周囲からのサポートを受けることで、克服していくことが可能です。
人見知りで悩む自分を否定せずに受け入れて、少しずつ前向きな変化を遂げていくことが大切です。
同じ悩みを持つ人と交流したり、かつてあがり症や人見知りですごく悩んでいた人が克服していることを知ると、「自分にもできる」「きっとうまくいく」と思える力が育っていきます。
豊かな人間関係と充実した社会生活を築いていけるように前向きな努力を続けていきましょう!