「あがらないコツはありますか?」「一瞬であがりをなくす方法はありますか?」とよく聞かれます。
一瞬で、しかも簡単にできる方法があります。
身体的アプローチで言えば、やはり呼吸法や筋肉弛緩法。
心理的アプローチなら、ずばり、「あがりから意識をはずすこと」つまり、「あがりのことを考えないこと」です。
しかし、これは簡単そうで実は非常に難しいです。
長年あがり症で悩んでいる人にとって、「人前=あがってしまう嫌な場所」という思考パターンが出来上がってしまっているからです。
たとえば、かつての私もそうだったのですが、本読み恐怖症の方に朗読していただくと、その方の頭には話の内容がまったく入っていません。
あとから「どんなストーリーでしたか?」と伺っても、まったく覚えていないことがほとんどです。
いわゆる「頭が真っ白」の状態です。
同様に、あがり症の人にスピーチをしていただくと、何を話したかまったく覚えていないことが多いものです。
スピーチが終わったあとも、放心状態になりますので、隣の人の名前すら憶えていない人が多いのです。
どうしてこのような状態になってしまうのでしょう?
自分の心臓の音や声の震え、つまり「ご自身のあがり」にしか意識が向いていないからです。
これでは、どんなに場数を踏んでも、失敗を繰り返すばかりです。
これを変えるには、「人前=何かをさせていただく場所」に意識を変えることです。
人前に出たら、話す内容や話す目的に集中してみてください。
披露宴スピーチだったら、新郎新婦のために、お祝いの言葉を伝えるのが目的です。
あなたが緊張しようが、お二人には関係ありません。
朝礼やプレゼンだったら、誰に、何のために、何を発信したらいいのか、それを考えることです。
おのずと何を話したらいいかも明確になってきます。
このようなことに意識を向けると、あがりには意識が向きません。
あとになっても、自分の話したことや周りの反応をしっかり覚えていられます。
この、「話したことを覚えているか」というのが、あがり解消のひとつのバロメーターといってもいいでしょう。
「話す内容、目的に集中する!」
騙されたと思ってぜひやってみてください!効果テキメンです。
「人前に出るときには、必ず目的・役割がある。それを忘るべからず!」です。
頭の中がシロクマでいっぱい!?「抑制の逆説効果」
1987年にアメリカで行われた「シロクマ実験」というのがあります。
参加者を3チームに分け、シロクマの映像を見せたあと、それぞれ次のように指示を出します。
①シロクマのことは覚えておきなさい。
②シロクマのことは考えても考えなくてもいい。
③シロクマのことだけは考えないでください。
すると何と、③チームの方がシロクマを思い出す回数が一番多いという結果になりました。(皆さんも、既にシロクマくんで頭がいっぱいになってしまったのではないでしょうか?)
考えないようにすればするほど思い出してしまうことを、心理学で「抑制の逆説効果」といいます。
別れた恋人を忘れようとすればするほど忘れられないのもそうですね。
忘れたいほど辛い失敗やトラウマは、フタをするのではなく、きちんと受け入れてあげましょう。
・頑張るのは逆効果!?「努力逆転の法則」
シロクマ実験と似ていますが、心理学で「努力逆転の法則」というのがあります。
たとえば、「明日は早いから今夜は早く寝なくては」と思えば思うほど、なかなか寝付けないという経験、ありますよね。
「あがったらどうしよう、あがってはいけない」と思うと、どんどん緊張は増してしまいます。
過去にあがりで失敗した人は、「あがらないように」と努力すればするほど、あがっている姿を潜在意識から呼び起こしてしまうのです。
「あがってはいけない」ではなく、「緊張するのは当たり前」「あがってもオッケー」と開き直ると、逆に落ち着いてきます。
努力するのは前日まで。イザとなったら開き直る方が成功確率は上がります。
From:鳥谷朝代