一般社団法人あがり症克服協会 認定講師 宮松 大輔
心理カウンセラー
NHKカルチャー話し方講師
目次
1. あがり症になりやすい性格
1-1. ①人前で恥をかきたくない
1-2. ②失敗したところを見せたくない
1-3. ③自意識過剰
1-4. ④責任感が強い
1-5. ⑤完璧主義で真面目
2. あがり症になりにくい性格
2-1. ①過剰に気を使わない
2-2. ②甘えやすい
2-3. ③適当主義
3. あがり症になりやすい性格を変える方法
3-1. ①人前で恥をかきたくない
3-2. ②失敗したところを見せたくない
3-3. ③自意識過剰
3-4. ④責任感が強い
3-5. ⑤完璧主義で真面目
1.あがり症になりやすい人の性格
あがり症は性格だから治らない、生まれつきだから仕方ない、と諦めてしまっている人がいますが、そんなことはありません。
性格は表裏ありますので、良い面もあれば悪い面もあります。
ただし、あがり症になりやすい性格というのはあります。
あがり症になりやすい人の性格を5つご紹介します。
誰しも人前で恥をかきたくないと思うものですが、それはとりわけ日本人には強く根付いています。
世界には、「罪の文化」と「恥の文化」があります。
「罪の文化」とは、人から見られている見られていないに関わらず内面的な罪の意識に基づいて行動する文化であり、「恥の文化」とは、他人からの非難や嘲笑などを恐れて自分の行動を律する文化です。
分かりやすい例で言いますと、周りに人がいるとゴミを捨てないけど誰もいなくなったことを確かめると平気でゴミを捨てる人が多い国は、「恥の文化」。
そうではなく、周りに人がいるいないに関わらず自分の内面や道徳に反するからしないとする人が多い国は、「罪の文化」です。
海外と比較すると日本は「恥の文化」の国といえるようです。そのため、日本には特に恥をかきたくないという性格の人が多いのです。
いいところしか見せたくない、と言い換えた方がいいかも知れません。「ええかっこしい」のクセがついている人です。
この傾向は特に、子供のころからあまり失敗したことがない人に多いようです。
学校でも、家でも褒められて、できて当たり前で育ってきた人。
期待がいつしかプレッシャーになって、「(まわりの人を悲しませたくないから)失敗したところは見せたくない」という思いに至る人も少なくありません。
プレッシャーとは上手につきあうことが大切です。
出典元:「若者のためのメンタルヘルスブック – 厚生労働省」-厚生労働省
他人からどう見られているかを過剰に気にしてしまう状態です。
「自分が一番かわいい」という思いが強い人の特徴ですが、それ自体は当たり前なので咎める必要はありません。しかし、他者からの目線ばかり気にしていると、自分と言う評価軸を失っていつも自信がない心理状態になってしまいます。
いつも自分が中心でにいないと気が済まない性格ともいえますので、悪い言い方をすればジコチューといった見方もできます。
あがり症で悩む人の多くは、人前で話す機会がある人です。
会社で言えば、役職が高い人ほど悩むことも多くなります。
管理職や経営者の方が、大勢の前で話す機会がたくさんあります。
そして、そういう役職の方は、当然ですが責任をたくさん背負っています。
その責任感が強いと、「責任を果たさなければ」と、追い求めて、それが自分自身へのプレッシャーにもなるのです。
自分にかけるプレッシャーが強いほど、「うまくできるだろうか」という不安も強くなり、その不安から緊張が強くなります。
出典元:「過剰な責任感が、心配や強迫傾向(確認の繰り返し)を強める 」-広島大学
完璧主義とは、過度に高い目標を設定して、決められた時間のうちに完璧な結果を出すことを求める人のことを言います。
もちろん、こなせればよいのですが、完璧主義の人の評価は自分自身の評価というよりは、他者からの評価を気にしている点が問題となります。
「すべて完璧にこなせなければ、他者から評価されない」
そういう思いや環境で育ってきた人が多いです。
常に高すぎる目標に対して他人からどう見られるか気にしているので、神経が休まるときがあまりありません。
これが行きすぎると、本来の結果よりも、他者からの評価が第一目標になってしまうので、あらぬ方向に努力してしまうことにもなります。
2.あがり症になりにくい性格
あがり症で悩んでいそうにない人を見ては、ああいう性格だったらこんなことで悩むこともなかったのに…と思うこともあると思います。
しかし、見た目だけではわかりませんし、あがり症で悩んでいなくても他のことで悩んでいることもあるかもしれません。
最初に述べたように、性格には表裏あるので、どんな性格がよいというのは一概には言えませんが、あがり症になりにくい性格を3つご紹介します。
他人の反応に過剰に反応しない人は、他者からの視線を必要以上に気にしていません。
相手からどう思われているかよりも、自分がどう思うかの方が頭の中のウェイトを大きく占めています。
1対1の場合もそうですし、大人数の場合には、いわゆる「空気を読まない」という言い方もできます。
あまりにも気を使わないと、社会人としてはマイナスに映る面もあります。
悩んだときや苦しいときに、すぐまわりに言える性格の人です。
失敗しても自分だけで抱えることをせず誰かに頼ろうとする人、助けを求められる性格の人は、悩みを必要以上に大きくすることがありません。
あがり症は、自分ひとりで閉じこもってしまうからこそ負のスパイラルであがり症状がひどくなってしまう傾向があります。
半面、甘えが行きすぎると、信頼が得られなくなることもあるでしょう。
何事も完璧にやろうとせず、ほどよく対処して、結果が伴わなくても、「ま、いっか」と思える性格の人です。
自分に対するハードルが高くないため、挫折することも多くありません。受け入れる心が備わっています。
例え緊張をしても、その出来事を振り返って「恥ずかしい経験をした」と自分を責めることはせず、「終わったからもういい」「やることはやった」と、細かく顧みることもないような性格です。
しかし、あまり多くのことを適当で流すと自分自身の成長が妨げられるため、社会人としては停滞してしまうこともあります。
3.あがり症になりやすい性格を変える方法
性格を変えるというと難しく感じるかもしれませんが、思考グセや行動パターンを変えると思ってください。
あがり症に陥らないように、少しずつ自分自身のクセを見直していきましょう。
以下、それぞれのあがり症になりやすい性格を変える方法を示します。
人前で恥をかきたくないという思いが非常に強い人は、普段から、人から見られているかどうかで行動を変えるのではなく、自分の内面の意識にもとづいて行動するようにしましょう。
例えば、人が見ている見ていないに関わらずゴミは持ち帰る、困っている人がいたら電車やバスで席を譲る、などです。
思考グセを変えるトレーニングと思って、意識してみてください。
失敗を恐れすぎる人は、人前で話す機会があったら人前で話せるようになるまたとない練習のチャンスと思って、進んで準備・練習をするようにしましょう。
どうしても「失敗」が怖い人は、「失敗」の捉え方を少し変えてみましょう。
かの有名な発明家トーマス・エジソンの言葉です。
「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ。」
失敗がなければ、何が最適なのかわからないだろう、という言葉も残しています。
エジソンが気の遠くなるような時間と失敗を繰り返してくれたおかげで、低価格で効率的に生産できる「電球」が発明されることになりました。
人前で話す機会を避けることは、人前で話せるようになれるための機会も失っていることになります。
自意識過剰の傾向が強い人は、自分から行動を起こして自分から周りを「見る」機会を増やしましょう。
そのために、もう少し自分以外のことに注目することを習慣にするトレーニングを行ってみましょう。
日本の著名な画家で山下清さんがいました。彼は旅の道中での情景を脳内で記憶しておくことができ、一目で細部まで描きあげることができたと言われています。
これは山下清さんの特別な能力だったと考えられていますが、そこまでは無理でも、同じように情景を記憶してあとで絵に描くつもりで注目することを時々行ってみましょう。
自己紹介などで自分の順番を待っているときは、前で話している人の話を集中して聞くことで自分以外のことに注目することができますが、これも同じことです。
今の情報過多の世の中、1日のうちに受け取る情報量は江戸時代の1年分ともいわれています。その分、自分から何か行動を起こす機会が減っているとも言えます。
対人不安は現代の誰しもが持つかもしれないような身近な感情です。
出典元:「対人不安に対する研究動向」 -東京学芸大学
責任感が強すぎる人は、準備・練習をしっかりやることと同じくらい力を入れて、発表前にできるだけ関係者とコミュニケーションを取っておくようにしましょう。
話す内容を自分一人で決めるのではなくて、上司や同僚、家族や友人に話す内容を聞いてもらったり確認してみたり、ステークホルダーと握っておけると、責任が分散されて気持ちラクになります。
完璧主義で真面目すぎる人は、何かをやる時の目標を、高すぎず・低すぎず、正しく設定するようにしましょう。また、作業時間も余裕をみて自分にきつくないように計画します。「この作業をこの時間でできたらスゴイと思われる」のような考えで設定しないようにしましょう。
常に評価されていることに軸を置いているので、人から見られている意識が強く、その思考は緊張の大きな原因となります。
「頼まれると断れない」というタイプの人も多く、引き受けたからには完璧にやらなければという思いも強くなります。
うまく全部できなくても自分自身がやったことを褒めて、「次がんばればOK」と思うような思考に変えていきましょう。
4.まとめ
性格とは、ある事象が発生したときにそれに対してどう反応する人間なのか、と言いかえることができます。
例えば、「緊張した」という事実があったとして、それ自体は多くの人が経験することです。
緊張した経験がある人は世の中に8割以上いると言われていますが、全員があがり症になるわけではありません。
それは、緊張したことに対する反応の仕方が違うからです。どう反応するかは、それまで生きてきた環境の中で育まれてきた、思考グセや行動パターンにより決定されます。
しかし、その反応の仕方は、変えていくことができます。それが今回コラムでお伝えした内容です。
過去に捉われず、あがり症克服の目的に向かって、あがり症になりやすい性格を変えていきましょう。

