一般社団法人あがり症克服協会 認定講師 宮松 大輔
心理カウンセラー
NHKカルチャー話し方講師
目次
1.新年度、リーダーだって緊張します。
2.あがらない自己紹介
3.あがらずに力を出し切る方法
新年度になると自己紹介やスピーチの機会が増えます。
大切なのは、その場に応じた自己紹介やスピーチのすることです。
しかしいつもよりフォーマルな雰囲気になるので、あがり対策もしっかりしておきたいところです。
このコラムでは新年度の自己紹介やスピーチのあがり対策について記述します。
1.新年度、リーダーだって緊張します。
チームやグループ、部署などのリーダーをされている方にとっては、入社式などの大きなイベントではないにしても、組織の中で新年度の挨拶をすることはあると思います。そこには新しいメンバーが加わることもあるでしょう。
あがり症克服協会にいらっしゃる方は、役職についている方がとても多いです。
管理職だから緊張しないわけではありません。人前で話すことをとても苦手にしていらっしゃる方が本当にたくさんいます。
だからといって、社内で挨拶を逃げるわけにもなかなかいきません…。そこが、悩みが大きい原因のところでもあります。
「管理職=人前で話せて当然」という思考パターンがまた自分を追い詰めてプレッシャーとなり、不安となり、あがりにつながってきます。
管理職であがり症にお悩みの方の特徴には下記3つがあります。
①仕事ができる
②1対1のコミュニケーションは得意
③よく人前での発表を依頼される
それがなぜあがり症につながるか、その理由は大きく下記2つです。
①会社の期待に応えようとするプレッシャー
②客観的視点を持つことが求められる
詳しくは下記コラム「管理職のあがり症の悩み~3つの特徴と5つの対処法」をご参照ください。対処法も記載しています。
2.あがらない自己紹介
1対1とか、席で不通に話しているときは何ら問題ないのに、前に出てかしこまって自己紹介となると、あがり症の人にとってはとたんに緊張感が体に走りますよね…。
そのシチュエーションの大きな違いは、会話が行ったり来たりするか一方通行に話すかです。
そして多くの人は、圧倒的に「会話が行ったり来たりする」方に慣れています。
一方通行に慣れていないのでどうするかというと、どこかで見たことがあるような自己紹介を真似します。
意識的にそうする場合もあれば、無意識的にそうなる場合もあると思います。
そこでよくないのは、「慣れていない人の自己紹介」を参考にしてしまうことです。
傍目には緊張しているかどうかは分かりません。
ただ、無難にこなしているようには見えます。
そこに少し落とし穴があります。
マネや参考は悪くないのですが、自分の気持ちが入っていないと、緊張しやすくなります。
伝える気持ちがないとどうなるかというと、他人からどう見られているかが気になります。
「会話が行ったり来たりする」ときには、お互いに気持ちが入っています。こういうことを話したい、聞いてほしいって。
だから、普通に会話しているときは、他人からどう見られているかを気にすることがないのであがらないのです。
(逆をいえば、普通の会話でもあがる人は、伝えたいことは特にないので、他人にどう見られているかの方を気にしてしまう場合です。)
「私は〇〇から異動してきました、XXです。現在入社△年目です。今までは■■の仕事をしてきました。これからはそれを生かして□□の業務をこなしていきたいと思います。よろしくお願いします。」
自己紹介苦手だから、とりあえず無難に、早く終わればいいって思ってこういうよくありそうな自己紹介で行こうとすると、あがってきます。伝えたい気持ちが全く見えません。聞いている方も、伝わってくるものを感じないでしょう。
状況の説明だけでなく、喜怒哀楽などの感情を入れるとガラッと変わってきます。
「私は〇〇から異動してきました、XXです。現在入社△年目です。ここの職場の雰囲気は前からとてもいいと思っていましたので今日から働けることを楽しみにしていました。今までの業務にはかなり慣れていましたが、思い切ってやりたい仕事をしたいと思うようになり、希望が通ってここに異動することができました。早くみなさんとたくさんお話しをして慣れていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。」
自分のそのときの気持ちを込めた文面を考えてみましょう。
あがらない自己紹介のポイントは以下です。
①.長すぎずコンパクトに
→1分くらいで十分です。あれもこれも話さない方が印象が良くなります。
②.名前はゆっくりとはっきりと
→早口にすると、余計心拍数が上がります。呼吸をゆっくりを心がけましょう。
③.姿勢よく遠くを見て
→人は見た目の印象が7割と言われています。笑顔も見せられるとより良いです。
自己紹介前が一番緊張のピークです。そのときはこの3つを思い出してくださいね。
3.あがらずに力を出し切る方法
準備していても100%の力が発揮できないのが、あがり症のつらいところ・・・。
緊張というやつが、本来の力を奪ってしまいます。
人がいないところではすごくパフォーマンスができていても、いざ人前でできなくなったらそれは誰も得しないもったいないことです。
あがらずに力を出し切る方法、そのうちの一つはまず、あがりづらい体を作ることが大切です。
ポイントは以下の5つです。
① 適度なリラックス
→緊張すると上半身、特に肩や首が硬くなってきます。ストレッチをして上半身の力は抜くようにしましょう。
② 正しい姿勢
→緊張すると猫背になって視線が下がってきます。その状態では呼吸が苦しく声が震えやすいので良い姿勢に戻します。
③ 深い呼吸
→緊張すると呼吸が浅くなり声が震えやすくなります。腹式呼吸で深い呼吸に変えていきます。
④ 強い発声
→緊張しているときに弱い発声では震えてしまいます。腹式発声で震えに負けない声を出すことができます。
⑤ 良い滑舌
→緊張すると顔の筋肉もこわばってきて喋りにくくなります。普段から発声練習をして滑舌をよくしておくことが効果的です。
このように、リラックス状態は自分で作れるものです!できる対策は積極的にやりましょう。
特に大切なのは呼吸です。呼吸を制する者はあがりを制す!です。
もうひとつの方法、メンタル面ですが、自意識過剰があがり症の大きな原因です。
「自分はあがって見られているに違いない」「他の人は自分のあがりに注目しているに違いない」「みんな声の震えに気づいているに違いない」「足が震えているところを見られて変に思われているに違いない」
他人が自分をどう見ているかを気にしすぎるている状態です。
これをなくしていくには、動画チェックがお勧めです。
自分が話している姿を動画撮って、見てみるのです。
そうすると、自分が思っているほどあがっているように見えません。
本当です。
これに気づけると、自意識過剰が改善されていきます。
初めは自分の姿を見るのが恥ずかしいはずです。
しかし、鏡と同じで、慣れていきます。いいも悪いもありません。
世界中で自分の動画を見たくないのは、自分ひとりです。他人はなんとも思っていません。
これが自意識過剰の正体。
これがあるうちには、あがり症の火種は消えません。
方法は簡単、自分が話している姿を自分で見ることを繰り返していくのです。
そのときに、自分一人で見ると、どうしてもアラ探しに走ってしまうので、誰かと一緒に見るのが良いです。
そして、他人から感想を言ってもらうこと。そうすると一番客観的に評価ができます。
自分としてはあがっていたはずなのに「上手だったよ!」と言われるのは、決してお世辞じゃないのです。
「自分が思っているほど緊張しているように見えない!」これを覚えておきましょう。
これらの方法、実際にぜひ使ってみて下さいね。