発表会のあがりをコントロール!~演奏の楽しみを取り戻した僕~ あがり症の克服なら一般社団法人あがり症克服協会

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発表会のあがりをコントロール!~演奏の楽しみを取り戻した僕~

演奏のあがりコントロール

2022.05.13

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一般社団法人あがり症克服協会 認定講師 村田 光史

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目次

1. 発表会の演奏であがる人とは
2. 発表会の演奏するときのあがりで苦しむ人へ
3. あがるのは能力が足りないから?
4. 備えあれば憂いなし?あがらない?
5. 自信をつけることとプレッシャーとの戦い
6. 練習を重ねるほどあがりを感じた原因
7. プレッシャーに打ち勝つ演奏あがり克服法
8. 最後に―あがりで自分が本当に困ることになる確率―

 

1.発表会の演奏であがる人とは

ここは、とある音楽ホールです。何十何百という観客がひしめき、演奏者の入場を今か今かと待っています。

開園時間を2分ほど過ぎたころ、一人の男性がようやくステージ上に現れました。彼は緊張した面持ちでステージの中央に立ち、丸まった背中で申し訳なさそうに礼をします。

観客の拍手が鳴りやむと、会場は一気に静まり返りました。彼はおどおどした様子でようやく楽器を構えると、ようやく演奏を開始しました。スポットライトに照らされた彼を助けてくれる人は、当然いません―。

 

2.発表会の演奏するときのあがりで苦しむ人へ

僕は当時、楽器を演奏するときの“あがり”に酷く悩まされていました。

発表会で楽器を演奏するというのは、見た目以上に繊細な作業です。楽器を操る手足にはミリ単位の正確性が求められるし、瞬間的な判断力も必要です。コンクールやオーディションでは、どんな些細な間違いも許されません。何百何千という時間と努力の積み重ねがたった一つのミスで水泡に帰すのです。手は震え、汗は滝のように流れ、呼吸は乱れ……そのいずれもが理想的な演奏の妨げになりました。

 

あがり症の症状

 

今でこそあがり症をコントロールし、演奏することの楽しみを取り戻した僕ですが、僕自身があがりに苦しんだ原因は何だったのか。同じく演奏のあがりで苦しむ人に、僕自身の経験から克服していく方法をお伝えしたいと思います。

 

3.あがるのは能力が足りないから?

僕は本格的に楽器の演奏を始めて10年になりますが、その間ずっとあがりには悩まされ続けてきました。初めの頃は「もっと演奏の技術が上達すれば、自然にあがらなくなるだろう」と思っていたのですが、その考えとは反するようにあがりは歳を重ねるごとに強くなっていきました。
発表会の緊張で演奏が変わってしまう人は、数多くいると言われています。

出典元:緊張・あがりは、なぜ演奏を変えてしまうか – ヤマハ音楽研究所

(自分で言うのもなんですが……)人並み以上に練習をしている自負はありましたし、それなりに場数も踏んできました。それでもあがりの症状が自然に消えてなくなるということはありませんでした。それは何故でしょう?

 

4.備えあれば憂いなし?あがらない?

僕の“あがり”の原因はいくつかあるのですが、その中の一つをご紹介します。

小見出しにもありましたが「備えあれば憂いなし」という慣用句は、どちらかと言うと前向きな意味で使われますよね。準備さえしていれば心配はない。何とも頼もしいお言葉ではありませんか。

確かに準備は大切です。「本番が始まる前に結果は決まっている」とか「準備が8割」とか、準備の大切さを説いた格言も数多く存在しています。あがり症を抱える面々の中にも、「事前準備をしっかりしただけであがらずに本番を乗り切れた」という人は数多く存在します。

 

受講者の声

 

しかし、準備をしていく過程で一つだけ気を付けなければならないことがあるのです。
吹奏楽

 

5.自信をつけることとプレッシャーとの戦い

先ほども述べましたが、準備は大切です。単純に自身の能力が向上するのはもちろん、「これだけやったんだから大丈夫!」という自信は心強いお守りになります。

しかし、僕が陥ってしまったのはこういった状況でした。

「これだけやったんだから大丈夫!」

「これだけやったんだから……大丈夫?」

「これだけやったけど本当に大丈夫かな?」

「これだけやったのにダメだったら?」

僕は普段、料理を盛りつけもせずフライパンをお皿代わりにしてしまうほどズボラですが、こと発表会の演奏となると潔癖なまでにこだわっていました。

自分の演奏を録音し、問題点を探しては同じところを何百回も繰り返し練習し「もうこれ以上はやりようがない」というところまで準備をしていました。しかし、あまりに自分を追い込み過ぎると、自信がつくのを通り越して、ついた自信を失うことを恐れてしまうのです。

出典元:緊張するとパフォーマンスが低下するのはなぜ? – 関西学院大学
「これだけやったのに、もしダメだったらどうしよう。これ以上どう頑張ってよいか分からない。だから絶対失敗するわけにはいかない!

 

僕は自分では意識しないうちに自分にプレッシャーをかけていたのです。

 

6.練習を重ねるほどあがりを感じた原因

少し話は変わりますが、皆さんは「ドミノ」を作ったことはありますか?

長方形の板のようなものをいくつも並べ立てていくあのドミノです。先頭のドミノを倒しただけで、連鎖的にパタパタとドミノが倒れていく様は実に壮快です。

基本的にドミノを立てていく作業はそう難しいものではありません。多少不器用な人でも、序盤はスイスイとドミノを並べていくことが出来ます。しかし、終盤になってくるとそうもいきません。序盤なら間違えてドミノを倒したとしても傷は浅いですが、終盤で誤ってドミノを倒してしまったら……その絶望は筆舌に尽くしがたいものがあります。

しかしこれは考えてみると中々興味深いことでもあります。

序盤だろうが終盤だろうが、実はやっていることは同じ「ドミノを立てる」という行為です。ですから実際の作業的な難易度は全然上がっていないのです。

「失敗したくない」

「もし失敗してしまったら」

「失敗しないように気を付けなくては」

そういった意識が勝手にドミノの難易度を上げているだけなのです。

そして、「少しぐらいミスしてもいいや」と思っているときよりも「絶対に失敗してはいけない」と思っているときの方が実際にドミノを倒してしまったりするのですから、実に皮肉なものです。僕が楽器の演奏であがってしまったのは、まさにこれが原因でした。

 

7.プレッシャーに打ち勝つ演奏あがり克服法

それでは、「失敗したくない」という気持ちを強く持ち過ぎないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。

「失敗を恐れるな!」「失敗しても死にはしない」「上手くいくと思えば上手くいく」

そういったことを言うのは簡単ですし、実際間違っているわけではありません。

 

あがりのメカニズム研究報告

 

しかし何でもかんでも「気の持ちよう」で片づけられては我々あがり症一同もたまったものではありません。僕が良く使う例えなのですが、「オバケなんていない」と思っていても、夜中に心霊スポットにいったら怖いのです。失敗なんて怖くないさ♪と何度唱えたって、簡単にその恐怖が消えることはありません。

 

そこで僕は「ボトムアップ法」というものを実践しています。恰好をつけてカタカナを使ってみましたが、要は何かしらの意識改善をしたいとき、直接その意識をどうこうするのではなく、実体験を通して体の底から意識を変えていきましょうね♪というアプローチ方法です。

出典元:認知心理学 – 九州産業大学芸術学部

 
ボトムアップ
 

以前僕が書いたブログ【“理性”だけで“あがり”を抑えられないワケ】でもお話ししましたが、

基本的に人間は、頭だけで考えていることよりも、実際に体験したことの方がかなり強く心身に作用するような造りになっています。

それを利用して、「失敗は怖くない」という体験を重ねることで失敗への恐怖を少しづつ消していき、更には「そもそも自分で思っているほど失敗してないな」という気付きを得ることが出来ます。実際に僕がどのようにそれを行ったかを紹介しますね。

 

まず紙とペンを用意して次のことを書き出していきます。

考えるだけではダメです。必ず書きます。(そうでないと客観的に考えることが出来なくなります)

 

  • 直近の緊張すると思われる本番は?

(例:来週の日曜日に100人の前で演奏しなければならない)

  • その本番の目的は?

(例:演奏を聴きに来た人に満足してもらうこと)

  • そもそも、その本番における失敗とは?

(例:お客さんに全く満足してもらえないこと)

  • 仮に上手くいかなかった時、あなたが失うものは?あなたが恐れることは?

(例:演奏の仕事をもらえなくなるかもしれない)

  • もし↑のような状況になったとして、それは本当にあなたにとって本当に困ったことですか?

(例:非常に困る)

とりあえずここまで書けば大丈夫です。その紙を無くさないよう大切に保管しておきましょう。他に特別なことをする必要はありません。あとはいつも通り、ガチガチに緊張したまま本番を迎えます――。

 

さて、本番はどうでしたか?

「ああーもう全然ダメだったー!」と闇雲に落ち込んでいるだけでは何も変わりません。冷静に、客観的に振り返りをしてみましょう。

しまっておいた紙を引っ張り出してきてください。それを見ながら、次のことについて書き出していってください。

 

  • 本番の目的は達成されましたか?
  • もし失敗だと思うなら、その根拠は何ですか?
  • あなたは何か大切なものを失い、恐れるような事態に陥りましたか?
  • もし仮に↑のような状況になったとして、あなたは今本当に困っていますか?

 

思い込みではなく、本当に起こった事実だけを基に考えてみてください。

我々が普段失敗だと思っていることや心配していることの9割は、何の事実にも基づいていない思い込みであることを「体験」出来ると思います。(理解ではなく体験というところが大きなポイントです。)これを何度も積み重ねることで、体の根本的な部分から意識を変えることができるのです。

 

8.最後に―あがりで自分が本当に困ることになる確率―

先ほど述べたように、我々が勝手に心配していることの9割は杞憂です。逆に言えば、心配事が起こる確率は10パーセント程度です。そして我々が本当に心配しているのは、本番が上手くいかないことそのものよりも、それによって何か良くないことが起こり、自分が困った状況に陥ることです。それが起こる確率を単純に計算すると次のようになります。

 

本番が本当に上手くいかない確率  → 10%

尚且つ何かを失ってしまう確率   → 1%

尚且つそれによって本当に困る確率 → 0.1%

 

思い込みや漠然とした不安に囚われていると見えないことですが、事実や数字で考えてみると、本番は全然怖いものではなくなってきます。

「頭では分かっているけど上手くいかない!」と悩んでいる方は、その分かっていることを「体験として」自分の中に取り込んでみてください。少しずつ世界が変わってくるはずです。
みなさんの発表会での演奏も、本来の楽しみ方ができますように!

 

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村田 光史
この記事を書いた人
村田 光史(koji)
一般社団法人あがり症克服協会 認定講師

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