あがり症を治したいと思う方の中で「心療内科」「メンタルクリニック」を訪ねる方も多いのではないでしょうか。そして帰るときにはクリニックで処方箋を書いてもらって最寄の薬局で薬をもらう事になります。
クリニックには「パニック障害」などと書いた小冊子があって、ページをめくると「選択的セロトニン再取り込み阻害薬=SSRI」や「抗不安剤」などの記述があります。この薬をのむと不安な状態から開放されると期待感も高まります。
私も、NHK名古屋の「あがり症・話しベタさんのスピーチ塾」に参加する前にこれらの薬をのんだことがあり、体験談としてお話をします。(あくまで個人としての体験談ですので薬剤師や医療関係者の見解と異なる可能性があります)
メンタルクリニックに行って問診の結果2種類の薬を服用する事にしました。「選択的セロトニン再取り込み阻害薬=SSRI」として「パキシル」10mgを1日1錠のみました。これをのみ続けると緊張感は全体に低下し陽気になります。
”全体に”の意味は軽く緊張するとこるでは緊張しにくくなり、沢山の人の前でスピーチをするようなとても緊張するようなケースでは頭が白くなりにくいという意味です
陽気になるほうは、けっこう、わかり易く変わります。笑顔が増えてジョークも言います。緊張感が取れるというより軽い躁状態になるようです。それでも人前でスピーチをする事は苦手でした。緊張する場面でお茶を飲むと手が震えてこぼしそうになるので、お茶を飲まないのは以前と同じでした。
頓服(症状が出たときに呑む)として服用した「抗不安剤」が「ワイパックス」です。これは毎日のむ薬ではなく、人前で話をするような緊張するとわかっている場面の2~3時間前にのみます。
この薬はすばらしい効き目があり不安そのものを抑えます。良く効いている状態では不安を感じる事がありません。人に気おされる事も少なく、落ち着いた状態で会話をする事ができます。目立った副作用もありませんでした。
服用し始めて生活は改善しました。パキシルをのむと軽い躁状態になるので心配をしたり尻ごみをする事が少なくなります。それでも人前でお茶を飲むと手が震えてのめない状況は続いていました
人前で話す事は相変わらず苦手でしたが、前もって予定がわかっているときは「抗不安剤」を服用します。そうする事で大きな行事はこなしていく事ができました。
飲みはじめて、2年ほどたったときに「そろそろ、薬を減らしていきましょうか」とお医者様から提案がありました。苦しいときに症状をやわらげるための薬なので日常生活が上手くいき始めると薬の量を徐々に減らしてやめていくようです。私はこのまま薬をのみ続ける事にしました。薬をやめる意義が良く分からなかったのです。
一ヶ月ほどして出張で東京へ行くことがありました。うかつにも薬を携行することを忘れたのですが2泊程度なら大事に至るまいとたかをくくっていました。
初夏の東京で、国会議事堂が見える道を歩いていました。そのとき、脳を揺さぶられるような感覚を覚え立ち止まりました。ズンッ!と何度か繰り返す感覚は不愉快なものでした。
あとで、クリニックの医師に聞くと薬をのめなかったので「離脱症状」が出たという事でした。薬をやめるのも減らすのも医師の指導が必要だったようです。
説明してくれた医師は変わった方で「しょせん薬だから。」といいます。薬で症状が出ないだけで解決になっていない。自分の状況を他人に話したり、街中で異性をお茶に誘ってあがり症を克服しろといいます。
その先生の指導で行動療法を行う事はなかったのですが、この出来事は薬をやめるきっかけになりました。薬を使って人前で話をしても解決にはならない。克服する事が必要だという事です。
この後、スピーチ塾に参加し、嫌だなと思いながら月2回の教室に参加し、年の1度のフェスでに出て人前で話をする事ができるようになって来ました。
いまだに落ち着いた気持ちで話をする事は少ないのですが、少しずつ未知のことに積極的になってきました。若い時期にこの状態に到達できればよりすばらしい人生が待っていると思っています。
from : 小林謙二